関東大震災ってどんな地震か知ってる?

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関東大震災という名前は、知っていても、実際には、どの程度の被害があったのかということについては、ほとんどの方が知らないのではないでしょうか。
防災の日を機に、関東大震災がどのような震災だったのかに興味を持って、調べるのもよいかもしれません。


関東大震災から85年 知られざる「複合災害」
9月1日8時0分配信 産経新聞

 日本の災害史上最悪の惨事となった関東大震災が起きたのは、1923(大正12)年9月1日。今から85年前のことだ。マグニチュード(M)7・9の地震と台風による強風が重なり、津波や土石流でも甚大な被害を出した。だが、火災被害があまりにも悲惨だったため、「複合災害」としての実像はあまり知られていない。「防災の日」にあたって、関東大震災の複合的な被害実態から、現代の防災につながる教訓を探ってみた。

 土砂災害による被害が大きかった今年6月の岩手・宮城内陸地震鹿島建設・小堀研究室のプリンシパル・リサーチャー、武村雅之さんは「関東大震災のときの根府川の土砂災害を思い起こした」という。

 関東大震災では、箱根、丹沢などの山間地で多くの土石流や山崩れが発生した。土砂災害による死者は約700人と推定される。最も大規模な土砂災害が神奈川県片浦村(現小田原市)を襲った山津波で、根府川の集落では約400人が命を落とした。

 「火山地帯で地震が起きると、土石流の恐れがある。そのことを知っていれば、岩手・宮城内陸地震で土石流に流された駒ノ湯温泉の人たちは、避難できたかも知れない」

 ≪台風が被害拡大≫

 関東大震災の死者・行方不明は約10万5000人。武村さんらが過去の資料を再検証して割り出した推定値で、それ以前は「約14万2000人」という犠牲者数が定説化していた。

 火災による犠牲者が圧倒的に多く、9万1000人以上と推定される。地震発生が昼食時の正午前だったことに加え、日本海に中心があった台風の影響で秒速10メートルを超える強風が吹き、火災被害を拡大させた。特に悲惨だったのは多くの被災者が避難した東京・本所区(現墨田区)の旧陸軍被服廠(しょう)。突然起こった火災旋風により、4万人も避難者が命を落とした。

 火災被害があまりに大きいために見落とされがちだが、揺れによる家屋の倒壊、津波、土砂災害がもたらした人的被害も、小さかったわけではない。

 激しい揺れで家屋の下敷きになった犠牲者は約1万1000人。95(平成7)年の阪神大震災兵庫県南部地震)による直接的な犠牲者の2倍にあたる。約300人と推定される津波による犠牲者数は、83(昭和58)年の日本海中部地震、93(平成5)年の北海道南西沖地震を上回る。また、土砂災害で700人もの犠牲者を出した地震は、明治以降では関東大震災の他に例をみない。

 ≪二面性あわせ持つ≫

 地震と台風が重なり、それに伴うさまざまな被害が発生した関東大震災は、どの被害をとっても日本の歴史地震で最大級かそれに近い規模の複合災害となった。被災地域は、首都圏の人口密集地から海岸沿いや中山間地にも及んだ。

 プレート(岩板)境界で起こる海溝型地震でありながら、震源断層は陸域にも広がっている。海溝型地震と内陸直下地震の両方の特性をあわせ持った特異な地震だが、この2面性が関東大震災に防災上の普遍性を持たせた。

 この20年に起きた被害地震を例にとると、大都市を襲った阪神大震災、山間地に被害を及ぼした新潟県中越地震津波被害が大きかった北海道南西沖地震は、関東大震災の一つの側面と重なる。30年以内の発生確率が70%とされる首都直下地震をはじめ、これから起こる地震への教訓も与えてくれるはずだ。

 武村さんは「関東大震災は火災被害が突出しているために、実像があまり知られていないという一面もある。教訓を生かすためには、被害の実態を正しく知り、伝えていくことが重要だ」と語った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080901-00000081-san-soci